« ぼくらはだんさーさん | トップページ | わたしの長崎 その1 »

2014年10月 4日 (土)

わたしたちの注文のすくない旅

                    Akita200                                                 

          花巻の駅前で夕方ごろ逢おうよ・・

         私たちは そんないいかげんな待ち合わせをした。
         お盆休みの彼女は 秋田の実家から
         私は 朝一番の普通列車に乗って 気仙沼で 途中下車した。
         海はあまりにもあっけらかんと陽に照らされ
         息をしてはいけないくらい 神々しくぱーんと輝いている
         ここは 神様の いちばんお気に入りの港なんだ。
         立ち寄った市場で 鯖のお刺身と大きなどんぶり飯と
         他のお店の人たちの差し入れの いろーんなおかずを 図々しくも
         ご馳走になって 笑い合って 花巻の約束を 忘れてしまいそうだった。
        駅前のバスロータリーに 思いがけなくやさしい夕陽が射していた
        大時計の所で 丁度逢えた よかった。
 
       美術館の中庭に 藤田 嗣治の銅像があった
       しばらくぼーと眺めていた
      どこかで 洋梨を買った
      いろんな大きさのが ひと盛りになって売られていた
      ホテルの窓から 通りを見ながら
       いちばん小さい 熟れたのを食べた
      パリで 青いりんごを見つけたときを想いだしてた
      部屋は さわやかな可愛い香りになってた
     そんな話をしたら
     一生にいちどでいいから 田沢湖に行ってみてよ
     角館生まれの彼女が おお真面目な顔で
     ぜったいよ と言った。
     たいせつな思い出にはいつでも まったく邪魔がない
     オリジナルのその思い出は 何度も編集されて
     さらにビビットな印象となって
     飽きることなく 幾度も何度も お気に入りのシーンから上映されると
     私と未来の私の肖像は時々入れ替わったりしながら
     他人の顔して 満足そうに並んで観てたりするんだよ。
     私は 買ったばかりの南部せんべいに はまってしまっていた。
    次の日 私たちは 吉里吉里人となった。
    海を眺め だらだらとおしゃべりをした ふふ
    小さくてなだらかな入り江 
    柔らかい白い砂 向こうの島のまあるい山々
    ふたりは 墨絵の中
    ゆっくりと ゆっくりと 
    波が寄せて 戻っていく・・
    白っぽい水玉模様の小魚が
   残って水辺でたむろしている
    次の波に誘われて しっぽで砂を掻いて
    くるりんとどこかに泳いで行った
 
    風が 日没とたっぷりの湿気を運んできたから
    とうとう 無人の駅に最終列車が停まったから
    そうして いつのまにか 
  星さえ音もたてずにたくさん降りてきていたんだ
    今日という楽しい日は もうおしまいだよ 車掌が告げた
    セピア色の駅のはだか電球が
    山間の 夕刻と無人の夜の静けさの中で 
    ふたりに
    夢の続きを語り始める
    ピー 出発うー
 

« ぼくらはだんさーさん | トップページ | わたしの長崎 その1 »

アート」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2008892/57572538

この記事へのトラックバック一覧です: わたしたちの注文のすくない旅:

« ぼくらはだんさーさん | トップページ | わたしの長崎 その1 »